2012年2月18日土曜日

Susie プラグインと GPL

axpdf--.spi という似非(まともにレンダリングせず画像データだけ抽出する) PDF プラグインを作成、公開しているのですが、公開ページにも書いている通りライセンス的に問題のない PDF Susie プラグインを作成したい、というのが目的の一つでもありました。私は一個人プログラマであって法的なところで確実なことは言えないわけですがちょっと書いてみます。

PDF は仕様が公開されているためオープンソースのレンダラも存在しています。最も有名なのは Ghostscript でしょうか。MuPDF なんてのもあるようですね。しかし、これらのコードを内部で使って Susie プラグインを作成、公開する、という方法には問題があります。これらのコードは GPL でライセンスされているためプラグイン自体も GPL で公開することになります。GPL での派生著作物がどの範囲にあたるのか、は議論の余地があり最終的には法廷で決着が付けられるべきところですが、とりあえず FSF の主張ないし期待するところを正とします。すると動的リンクされるプラグインが GPL でライセンスされている場合、本体側のプログラムも GPL でライセンスされていなければなりません(cf. GPL FAQ Can I apply the GPL when writing a plug-in for a non-free program? フリーではないプログラム向けのプラグインにGPLを適用することはできますか?)。Susie プラグインに対応したソフトで GPL でライセンスされているソフトというのはそう多くないはずです(自分は知りません)。つまり多くの場合でライセンス的に問題のない状態で使用できないことになってしまいます。FAQ のこの項では「フリーではないメインプログラムとのリンクを許可する例外条項」(cf. GPL FAQ What legal issues come up if I use GPL-incompatible libraries with GPL software? フリーではないライブラリを利用するフリーソフトウェアを書いているのですが、GPLを適用した場合どのような法的問題が発生するでしょうか?)の記述があるのですが、この例外条項を付与できるのは著作権者のみです。つまり使用しようとしている「GPL でライセンスされたライブラリ」の著作権者全てに許諾を得る必要があります。これはちょっと望み薄でしょう。

さて、ここまでは以前からそう思っていたことで、ここからはちょっと考えが整理できたかな、と思っていることです。やはり駄目そうです。コメントを参照ください。(2003/01/19) GPL な Susie プラグインを真っ当に使ってもらうためには例外条項がいるとして、では例外条項なしの GPL でライセンスされた Susie プラグインが、GPL でライセンスされていないビューワのもとで使用された場合、その責は誰が負うべきでしょうか。行為としてはビューワの使用者のものなのですが、一方で GPL はソフトウェアの使用に制限を課さないライセンスだという記述もあり、でも GPL の意図上使用者が自由に使えて良いわけはないし、かといって GPL なビューワとの使用なら問題ないんだから GPL な Susie プラグインを公開できないというのも変な話です。これについては GPL による制限が課されているのは使用の前の「動的リンク」であると考えることで GPL 違反をしているのは使用者である、と納得することができました。つまり例外条項なしの GPL でライセンスされた Susie プラグインを公開すること自体は問題なく、GPL でライセンスされていないビューワのもとで使用しないようにするのは使用者の責任であることになります。配布しないなら GPL に違反しないです。(2003/01/19) ただし、プラグイン作者は GPL でライセンスされていることを明示した上で(これは GPL で要求されています)、個人的には GPL でライセンスされていないビューワのもとで動作させてはならないとも明示的に警告するべきではないかとも思います、道義的に。より個人的には、例外条項を付けるか、付けられないならそもそも公開するべきではないとも思いますが。